2017年1月7日土曜日

石川県 能登島と七尾 流浪思索?

石川県はヒツジ(釣り執事)のふるさと。帰省に伴い1日だけ、能登島で釣りをしました。


しーんとしてます。

能登島の通(とうり)という漁港の深夜。

煌々と灯るライトは密漁対策ということです。

目白通り、練馬ICから関越道、上信越道、北陸道、そして能越道。

高速道路というのは、つくづく凄いワープチューブだと思うのですね。

東京から、能登半島の内浦にある漁港に、あっけないほど簡単に到達できてしまう。

島内の道には、中京、関西、山陽、関東のナンバーが夜通し走り回っています。

でも目指した場所には、たいへん運がよく、私らだけ。


電池ランタンを点けて投げ釣りを開始。

ケミカルライトの先には能登島にかかる2番目の橋(農道橋)の灯りが見えます。

通(とおり)は、その地名のとおり、潮の抜ける島と半島側が狭まる小さな瀬戸。

2012年の2月2日、大雪の降り続く晩から朝のこと。

私は、ここで4尾のキスを釣ることができました。

午前1時30分に2尾、午前8時30分に2尾の計4尾。

ひと晩中仕掛けをサビき続けていた結果なのですけれど、この4尾は私の自信と弾みになりました。30センチを超える降雪のなかでも、キスは釣れる。

寒ギス、雪ギス、雪中鱚とか、ヒツジは呼んでいます。

北陸は、雪が降ったほうが、ほっこりした感じで気温が高い。寒さを感じませんでした。

この日は雪がないので、キーンとした冷気が肌の露出した部分に沁みてきます。


此の度デビューの小型バーナー。

お湯があるということは、ありがたきかな。

冬の夜を過ごすためにいろんな用途で重宝しました。

沸騰した蒸気にかじかんだ指先をあててみたり。


湧かした湯でカップ味噌汁をつくり、栗おこわを食べる。

途中、小布施PA(上信越道)売店で購入した栗おこわ。

うまし!

だんだん楽しくなってきました。


やってしまった!!!

ヒツジの仕掛けです。能登島名物のウミケムシ。よく肥えて太っている!

この毛(剛毛・毒針)に触れたら一大事、自己責任、自己完結の世界だそうです。

ヒツジはまだ刺されたことがないそうですが、知人の悲惨な姿を幾つも見ている。

ニッパーとフォーク(食器の)を使って慎重に外していきます。

「やっぱ、夜行玉は外そうかなあ」とかブツブツブツ。光玉は魚にもケムシにも効く。

それも次第に根気が失せてきたらしく、午前2時にナイターの部は終了。車中で爆睡。


コケコッコーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

朝6時より釣り再開、農道橋が全貌を現しました。

ウミケムシにエサを食べられてたまるかと、必死にサビき続けます。

仕掛けを、しばらく停めたが最後、ウミケムシの餌食になってしまう。

ヒツジはウミケムシに慣れていますが、私はゼッタイに嫌だ。

そこへ、強い風が海峡筋を吹き抜けてくる。

風が止んだら、今度はみぞれ雨が落ちて来る。

冬の北陸らしい、スパルタンな洗礼を浴びること、でもこれは北陸を満喫すること?

谷村新司さんの歌う『北陸ロマン』を口ずさんでみたり。オトナの北陸?


釣り場の後ろは水田、冬ですが水を張っています。

風波によって運ばれる潮、塩害に対する手段らしいです。

長いこと、半農半漁で営まれてきた能登島を含む能登内浦・外浦の暮らしの知恵。

そして、ここで一旦蓄えられた水が土の滋養とともに海へ流れる。

キスやカレイ(おもにイシガレイ)は、その産物なのだとヒツジは言います。


ブルっときたぁー、重かった、でかい。

サビき続けた執念の果て? お恵み? 慰め? 大本命様!

太平洋側・東シナ海側ではカワハギが大本命様ですが、やっぱりこの方でしょう。

全国一律のいい感じ、投げ釣りのスーパースター。

ああ、なんか、夜中から始めて救われたような気持ち、鮮烈、冬の稲妻かな。

やっぱり、谷村新司さん。


ちょっぴりスリムボディでした。

産卵が終わって、これから春、初夏へ向けてすこしづつ体格と体調を整えていく。

掛けてしまって、ごめん。でもうれしい。

これも全国一律、キスを追いかけている方々の共通する想いなのかなと。


ああっ。

掛かってしまった。なんかヘン。重い。ウミケムシでなければいいな。

水面に現れたのは、小型のマコガレイ。飛びついたような感覚でした。

産卵が終わって、かなり痩せてました。


憎まれっ子、世にはばかる!

ヒツジは、ウミケムシ釣りの名人だと思います。

コロコロとよく肥えたウミケムシだこと、身体をU字に曲げて反抗しようとする。

ちなみに、ヒツジの知人で、怖い毛(剛毛・毒針)をすべて切り落として投げ返した。

するとカレイやマハゼが釣れたということです。

これら毒針は、魚たちから身を守る防護策かもしれませんね。


護岸にしつらえかれた木製の箱の台。

水鳥たちへのエサ箱の台かと思っていましたが、あながち外れていなかった。

溜まった水のなかには、毛(剛毛・毒針)だけが残されたウミケムシたちの死骸。

ヒツジ曰く、掛かったウミケムシをここに入れておく→釣り人が帰ったあと、鳥たちがつつついて食べる。毛も毒針も、鳥の足爪には刺さらない。つまり鳥葬ですね。

あ。トリ年ならではの、水辺のトリ様へのご馳走テーブルということ?(すべて推察)


今回、ヒツジがいちばん気がかりだったという事案。

護岸に生えるホンダワラの帯が脆弱、ほとんど成長していない。

温暖化? 水質の変化? 根がかりしなくてラクでしたが、そんな問題ではない?

そういえば、能登島名物のナマコ漁。

2012年の時は、護岸のぎりぎりまでやってきて半泣きでしたが、一度も来ない。

なにかマズイことが起きていなければいいのですが。とにかく。

大本命様が掛かったことだしと、島内の南側、七尾南湾側へ移動。


能登島町佐波港の埠頭。

ヒツジが子どもの頃は、この佐波港が、半島と島とを結ぶフェリーの玄関口だったそう。

埠頭はその後の埋め立てによって作られたもので、作業は年末年始でお休み。

ちこっとお邪魔しての投げ釣り。


よしっ!

美しいロングボディに出会うこと、ふたたび。

やっぱりいい、キスはいい、それも目指して掛かると、もっといい。大きいのがいい。

いま、私には、ふたりの大本命様がいると思うのです。

シロギスか、カワハギか。

この、どちらもイイと(掛かるとしあわせ)という目的があるのはしあわせ。


あ。

この子が飛びついてきた。口吻がビヨーンと伸びる面白い子。

能登内浦には多く生息していて、地元での呼び名はギンダイ。

どこがタイや!とつっこみたくなりますが、石川県の呼び名は直感的で気に入ってます。

川に入ってくればカワダイ(クロダイ・チヌ)

川に入ってきたからカワギス(マハゼ)

川や沼で暮らしているからカワガレイ(ヌマガレイ)

体表がギンギラだから(ヌルヌルですが)ギンダイ(ヒイラギ)

浦に福をもたらすから福来魚フクラギ(ブリの若魚。関東ではイナダぐらい)

そんなことで、なんとなく納得して、竿を片づけました。

大本命様を見た。夜中から釣りをしたので、もういいかなという気持ちです。


ほら。

竿を片付けた瞬間から天候が回復しました。

これは法則のようなもので、竿を出そうとしたら雨風の嵐、納めたらぽかぽかと春風。

海の神様、わだつみ様はきっといらっしゃると私は思うのです。

能登島の最南端から富山湾側を見下ろした風景、対岸の遠くは立山連峰。

手前の船たちは、全国的に有名な大型定置網の調整の作業をしているようでした。

いまは、寒ブリ漁の真っ盛りです。


能登島大橋で七尾市街側へ戻り、大型定置網で有名な庵町の港へ。

朝の鉄火場を終えてつながれた船たちはのんびりぷかぷかと浮かんでいました。

対岸に居るメインの船たちと手前が獲った魚たちの運搬船。

早朝の漁場の光景はテレビでしか見たことがありませんが、現物を目のあたりにすると、

男たちの苛烈な漁場の映像が思い起こされてきます。


能登ぶり、氷見ぶり、つまりは、日本海スーパー本ぶり。

全国市場でつねに注目される寒ブリを捕らえる網の一ヵ統(1セット)は5億円以上。

冷海水を作るタンク装置、海水シャーベットによる沖〆め、人員1チーム50人以上。

物凄いお金がかかっているんですね、能登と氷見の寒ブリに賭ける意地は人知を超えて。

釣りをおさめて、ふらっと寄ってみた港で、思わずびっくりしてしまう。

オトナになっても、社会科見学は必要だな、いえいえ、オトナだから感動するのか。


人体の〆めは近隣、和倉温泉の総湯。

なんじゃこりゃあああああ!!!

これが、総湯・元湯の普請、ヒツジによると最近建て替えたとか。入浴料440円。

全国でも指折りの超豪華さを誇る和倉温泉ですが、『銭湯』までもこうきたか!

館内には、和倉温泉の長い歴史を解説する博物館的な要素も併設されていました。

潮湯、熱くて、濃くて、ドカーンと効く。口に含んだらドしょっぱい。でも。

疲れとれる、疲れとれる、疲れとれる。いやあ、さすが歴史の潮湯、疲れとれる。

上がり湯に潮湯をかけてもベタつかない不思議な泉質の潮湯。

ふにゃふにゃになった身体で、なんとか金沢市内へ向かった次第でした。

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