2015年5月17日日曜日

吉野川よ、四国三郎よ

仕事を終えて、遅い午後の便にのる。
西日をおいかけるように空を飛んで降りたのは徳島空港。

ふと振り返って見たのは、阿波おどり空港、なんでそこまで、、、、、。


徳島には仕事の関係で幾度か来ました。本場の阿波おどりも、かぶりつきで拝見しました。踊りのリズム、高揚感、打ちがねのはやす動悸、素晴らしい! なにもかも。

でも、表玄関の名前にまでしなくても、というのは、踊らない方々もいるでしょうしね。


ともかく、市街地まで行って夕食。とっぷり日は暮れてました。徳島駅前は閑散。

そこで中の洲で駐車場をさがして、新町、眉山が見える! 敬愛なるさだまさし様!!!

いつもながらの浜千鳥。甘いスープの徳島ラーメンをしめに、クルマを停めた地下駐車場。蓄積した仕事の疲れも相まって、気絶、爆睡のレンタカー内。ヨダレを御免。


コケコッコーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ。朝です。

目指したのは、吉野川の河口。干潟でした。潮が引いていたので。

広大です、四国三郎と呼ばれています。私の生地の近所には坂東太郎が流れていますが、

四国三郎ってなんだかカッコいい。それぐらい四国の方々には父であり母であり。

ちなみに筑紫次郎は幾度か見ましたが、やはり「三郎」という響きに惹かれます。


さっそく、エサをつけて投げ釣りを開始。

傾斜している護岸がツルツルなので、構えのわりには、ちょろっと投げただけ。

でも、憧れていた吉野川・四国三郎。

気合いだけは、いつも以上に入っていたのですが、如何せん浅い。

干潟ですから、致し方なしか。魚を驚かせないように、静かにしていました。


ちいさなフグ(らしい?)にエサだけ齧られるので、ちょっぴり上流へ移動。

少しでも河を遡ったほうが深かったため。仕掛けの落ちた衝撃も少しは緩和?

足元も干上がった砂浜のため、すこしは踏ん張れました。

とにかく、美しくて、広くて、ゆったりした気持ちになれる河口の砂地。


近くでは、地元の常連のオジサンが二刀流。

やはり、魚を驚かせないように、小さなオモリでソロリソロリと探っていました。


水辺でエサを探すハマシギたち。

姿と動きがとても可愛くて、見とれてしまう。

いいなあ、四国三郎・吉野川。ゆったりとした時間が流れます。


突然、常連のオジサンの竿がしなる!!!

何度も竿をためてリールを巻く。ヤリトリはさすが年季の入ったオジサン。毎日釣りをされているとか。やがて干潟に上げたのはチヌ。ヒレの黄色いキビレチヌでした。

オジサン、狙っていた本命の獲得で、満面の笑み。エサはマムシ。

キビレチヌは汽水域のスーパースターですものね。


こちらは岸際の泥を掘ってエサを探すやはり年配の常連氏。

数が少なくなったとおっしゃいます。小さい頃からのスタイルとか。

エサはまず自分で見つけてくること。羨ましい環境です。


エサのオケに入っていたのは鉄砲エビ。

地元では、パッチンと呼んでいました。指でつまむと長い前足を使って「パッチン」と軽いアクションと音を出すことからパッチンとか。

なかなかお目にかかれない、貴重な生き物のようです。


干潟を駆け回っていたワンちゃん。

でもちょっと人見知りで、おいでおいでをすると手前でブレーキをかけてターン。

「嬉しくて仕方ないんですけどね、はにかむんですよ」とは後ろの飼い主さん。

よーく、解ります。かわいいヤツ。ちょっと触りたかったけど、、、、、、。


こんな、のどかな河口の干潟ですが、いま大きな開発のうねりが問題になっています。

河と海の接点にあたるぎりぎりの干潟付近に、四国縦断道の橋脚が立つという現実。

コンクリートの巨大な橋脚と大きな橋がかかるということですね。

じつは、今回の徳島行きの理由のひとつがこの現況を見るためでした。

そんなことをやったら、どんなことが起きるのか?


櫓を組みあげての、ボーリング調査が始まっていました。

水の底の地質を調べている段階、、、とは看板には書かれていました。

文面通りに受け取れば、環境の変化を鑑みたうえでの下調べの施術であります。

岸側には、作業を見守る地元の方々が数名。心配そうな面持ちの男性も。

しかし、こうして「粛々と」施行者側の作業は進められているように見えました。

「粛々と」今年の流行語大賞だと思ってます(こんな早くからね)


そのボーリング調査のすぐ上流には、小舟がついていました。

入れてあった網をゆっくり引き上げていく漁師の方。

なにを獲っているのか? 網に入っている獲物とは?

 吉野川をめぐる、長い営みを想像させるこじんまりした漁に見えました。


河岸や干潟の岩盤には、みどりのビロード。

青い筋状の海苔の一種です。これを、朝の赤だし味噌汁に入れたらさぞかし、、、、、。


私がちこっと竿を出したのは、河口の先端部から河寄りに1㎞ぐらい。

頃合いを見計らって竿を仕舞い、上流域へ向かうことにしました。

今回の第2に行きたかった場所を目指してレンタカーを走らせます。

遡上すること14.5㎞。目的地は突然あらわれました。


第十の堰。だいじゅうのせき、と呼びます。

第十とは、10番目の堰ではなく、地名がだいじゅうなのです。

憧れていた土地に、遂に、辿り着くことができました。


流れの傾斜に佇む鳥たち。

ちょうどひとりのバードウォチャーの方が種類を説明してくれました。

白いサギは、大きさによって、ダイサギ、チュウサギ、コサギ。

灰色っぽいのは、アオサギ。

みんな遡上してくる小鮎を狙って立ち尽くしているのでした。

中には、流れの上方を眺めて立っているのもいます。

流れに諦めて戻った小鮎を狙っているんでしょうか。


サギたちに混じって、カラスの姿もありました。

賢いカラスは、コサギが獲った魚を横取りでもするんですかね。警戒しながらエサを探すコサギたちの行動が面白い。

見ていて飽きません。何時間でも見ていたい。感動のあまりに、、、、。

胸が熱くなり、目頭まで熱くなってくる光景でした。


上流の橋を渡って、第十の堰の反対側へ。

こちらは長靴で入っていくことができました。

ピンピンと、小鮎が遡っていく姿を発見。時折ゴリのような魚も跳ねていました。

見ていて飽きない、つくづく、胸おどる光景。


第十の堰は、江戸時代の人々が吉野川の治水と灌漑を目的に石で組み上げたもの。

近代になって、そこに補強を加えて今日のカタチになったということです。

流れの下側までが海に通じる汽水域。上側が淡水ということです。

ところが、この淡水側にブラックバスを放流した者がいた。それが大繁殖して大問題になっています。

とんでもないことであります。清流・吉野川。四国三郎に。なんてことを!!!

河岸に建てられた小屋は、そんな行為や釣っての再放流を取り締まる監視小屋。

日本全国の大問題には国の法律もようやく成立しつつありますが、

ああ、これまでの感動が、ついため息に変わってしまう。なんてことを!


痛めつけられてきた四国三郎・吉野川ですが、1990年代には、こんな試練もありました。

この第十の堰を、従来の固定堰から「可動式河口堰」にするという計画です。

いわゆる多目的ダム、坂東太郎・利根川や長良川に代表される「ギロチン」方式ですね。

諫早湾でも有名になりました。これには徳島市民が爆発。

21世紀になって、賛成か反対か、いよいよ住民決戦となり、市民投票により反対派が勝利をおさめてなんとか事態を免れたという経緯があります。

もし、あの時、「ギロチン」方式のダムが造られたら、その下流の汽水域、干潟は完全に消滅して、四国の名川、吉野川は完全終了したと言われています。

市民の方々が、目先の開発特需を捨てて、吉野川のかろうじての悠久恩恵を選択した。

そう思うだけで、流れを見ながら、ついつい、涙が出てきまして、、、、、、、、、。

しかし、その、一番先端の河口域の干潟に、今度は高速道路の巨大な橋脚。

さらなる厳しい試練にさらされることになった吉野川。

耐えきれるのか? 四国三郎よ。


帰りの飛行機の時間が迫り、後ろ髪の引かれる想い。

もうちょっと、居たい。ずっと居たい。それもままならず空港へ走る。

途上、国道ぞいで見つけた讃岐うどん店にて、ぶっかけうどんを食べる。

徳島といえば阿波、徳島といえばラーメン。この地ではマイノリティフードなのでしょうけれど、これがとってもおいしく、丼はあっという間にからっぽ。

また来よう、また来たい。こころに誓って、徳島阿波おどり空港へ急ぎました。

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